「環境問題」と聞くと、どこか遠い世界の、大きな話のように感じてしまい、「結局、自分には関係ない」「他人事だ」と思ってしまうことはありませんか?
私自身、そんな思いが頭をよぎることがあり、先日開催された環境フォーラムに参加してきました。
その結果、環境問題の解決には、法的な対応はもちろんのこと、人々の意識や関係性が非常に重要であることを改めて痛感しました。今日は、その中でも特に心に響いた、高知県柏島での「海と人との共存」の事例をご紹介したいと思います。
「海は誰のもの?」柏島で起きた漁師とダイバーの対立と解決のプロセス
日本有数のダイビングスポットとして知られる高知県の柏島。美しいサンゴ礁と豊かな生態系が魅力のこの場所で、かつて地元の漁師さんとダイバーの間で激しい対立があったことをご存じでしょうか?
セミナーでは、NPO法人黒潮実感センターの神田さんから、その背景にあった「海は誰のものか?」という根源的な問いと、対立を乗り越えた解決のプロセスについてお話を伺いました。
解決の鍵は「交流」「ルール」「協働」
お話の中で特に印象的だったのは、対立を解消し、共存へと導くための3つの重要な要素です。
- 交流促進: 互いの立場や意見を理解し合うための対話の場を設け、人間関係を築くこと。
- 共通のルール作り: 双方が納得できる公平なルールを共に作り上げること。
- 協働の活動: 共通の目標に向かって、協力して具体的な行動を起こすこと。
神田さんは「地元が喜ばないことはヨソの人も喜ばない」とも語られました。
これは、外部の人がどんなに良いアイデアを持っていたとしても、まずは地元の人の思いや文化を尊重し、そこから共感を得ることが何よりも大切だという、地域活性化における普遍的な真理だと感じました。
組織化と根本的な問題解決への挑戦
当初、漁業者は漁協という組織を持っていたのに対し、ダイバーは個人事業主が多く、対等な話し合いが難しい状況でした。そこで、ダイバー側にも団体を結成し、交渉できる環境をつくっていったそうです。
さらに特筆すべきは、漁業関係者から「ダイバーのせいで魚が減った」という声が上がる中で、その表面的な原因だけでなく、魚が減っている根本的な問題(環境変化など多様な要因)を解決するために、漁師とダイバーが一緒に「魚を増やす活動」に乗り出したことです。
具体的には、海の環境改善として、山の木を海に沈めてアオリイカの産卵場所を作る事業を協働で行ったり、ウニの駆除などの活動も行われたそうです。
そして、そうした取り組みの様子を地元の子供たちに教えたり、見学させたりすることで、次世代への継承も図られていました。
私たちが学ぶべきこと:環境問題は「人との関係性」と「自分ごと」
この柏島の事例から、私たちは大きな教訓を得られます。 環境問題の解決には、単に法律や規制を遵守するだけでなく、関係者間の「人との関係性」や「自分ごと」として問題を捉える意識が不可欠だということです。
対立する利害を持つ人々が、共通の目標(「豊かな海」という未来)のために、互いを理解し、協働へと導くプロセスの重要性を、改めて強く感じました。
当事務所が目指す「環境法で困っている人をなくす」というミッションも、まさにこの「人との関係性」と「自分ごと」という意識変革のサポート抜きには語れません。
法律は、あくまで共存のための公平な「基準」ですが、その基準を活かすのは、人々の理解と協力なのだと改めて考えさせられた一日でした。